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生酛と山廃——伝統製法が生む複雑な旨味

乳酸菌と時間が生み出す豊かな旨味と酸。生酛・山廃仕込みの世界へ。

2026年3月14日

生酛(きもと)と山廃(やまはい)は、現代の多くの蔵が使う「速醸酛」とは根本的に異なる伝統的な酒母づくりの方法だ。

速醸との違い

現代の速醸酛は、外部から乳酸を加えて雑菌を防ぎ、短時間(2週間程度)で酒母を完成させる。一方で生酛は自然界の乳酸菌が自然に住み着くのを待ち、1カ月以上をかけて酒母を育てる。この「待つ」プロセスが、複雑な旨味と酸を生み出す。

生酛の工程

生酛の最大の特徴は「山卸し(もとすり)」だ。蒸米と麹と水を混ぜた後、杉の棒(櫂)で徹底的に米を擦り潰す重労働がある。真冬の深夜に複数の蔵人が「もとすり唄」を歌いながら行うこの作業は、今も一部の蔵で受け継がれている。

山廃の誕生

明治末期に「山卸し廃止(山廃)」という製法が生まれた。山卸し工程を省き、米を溶けやすくすることで乳酸菌の自然培養を行う方法だ。生酛よりも労力が少なく、現代でも取り組みやすい。

生酛・山廃酒の特徴

このような製法で醸した酒は、乳酸系の酸と複雑なアミノ酸(旨味)が豊かだ。若いうちはやや荒々しい面もあるが、熟成とともに角が取れ深みが増す。燗酒にしたとき、その旨味は最高潮に達する。

主な蔵と銘柄

大七(福島)・菊正宗(兵庫)・神亀(埼玉)・木下酒造「玉川」(京都)・新政(秋田)——これらの蔵は生酛・山廃を中心に据えた酒造りで知られる。特に大七の「生酛純米大吟醸 箕輪門」は、伝統製法の頂点に立つ一本だ。

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