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IWA5 × 御料理 盈月——アッサンブラージュが開く、一夜の対話

富山・白岩酒造が醸すIWA5と、本郷三丁目の名店・御料理 盈月による第2回Maker's Dinner。7つの皿と5種のアッサンブラージュが織りなした、忘れがたい一夜の記録。

2026年3月14日

IWA5 × 御料理 盈月——アッサンブラージュが開く、一夜の対話

2026年3月12日(木)、午後6時。本郷三丁目に店を構える御料理 盈月の暖簾をくぐった。この夜は第2回「Maker’s Dinner」——富山・白岩酒造の「IWA5」と、盈月の料理が交わる特別な夜だ。

IWA5 × 御料理 盈月 Maker's Dinner フライヤー

IWA5は、元ドン・ペリニヨン醸造最高責任者リシャール・ジョフロワ氏が、日本酒の本質と世界的美意識を融合させるために生み出した酒だ。富山・白岩酒造という静謐な地で、複数の原酒を精緻に重ねる「アッサンブラージュ」により、調和、奥行き、余韻を極限まで追求している。

この夜は白岩酒造社長のチャーリー氏が各アッサンブラージュについて直接説明してくださり、御料理 盈月の女将さんが一皿一皿の素材と仕立てを丁寧に解説してくださった。作り手の声を聞きながら飲み食いするという贅沢な構成が、この夜をさらに深いものにしていた。

この夜の主役は5種——「Assemblage 6」「Assemblage 4」「Assemblage 2」「Assemblage Reserves」「Assemblage 3」。席に着くと、それぞれのアッサンブラージュ番号が印刷されたプレースマットが敷かれ、どの酒がどの料理に合うかが視覚的に示された演出が、すでにこの夜の水準を告げていた。


第2回 Maker’s Dinner ~IWA×盈月~ 全品記録

メニュー


≪至味≫ Assemblage 6(冷)

浜坂 松葉蟹 太白仕立て 馬鈴薯 アスパラガス

松葉蟹 太白仕立て

松葉蟹の甲羅を器に見立てた一皿。浜坂産の蟹を太白ごま油で和えた仕立ては、蟹の甘みと香ばしさを最小限の介入で引き出している。アスパラガスの青みが彩りを添え、花の飾りが春を告げる。

合わせるのはAssemblage 6(冷)。「やや辛口・複雑味・ピュアな酸味」という設計が、太白ごま油のコクと蟹の繊細な旨みを整える。アッサンブラージュ固有の複雑な奥行きが、蟹の甘みをゆっくりと後押しする感覚があった。


≪箸割≫ Assemblage 4(冷)

地蛤 うるい 甘草 原木椎茸 花柚子 彩トマト 軸防風

地蛤 春野菜

春の野菜が勢揃いした一品。地蛤を主軸に、うるい・甘草・原木椎茸・軸防風と、春の苦みと甘みを持つ食材が丁寧に並ぶ。彩トマトと花柚子が酸とフルーティさを補い、まるで春の野原を食べているようだ。

Assemblage 4は「柔らかな酸味・ほのかな苦味」のプロフィール。蛤の磯香と春野菜の苦みを、このアッサンブラージュの穏やかな酸が橋渡しする。苦みが旨みに変換されていく感覚は、IWAの設計の精巧さを物語っていた。


≪煮物≫ Assemblage 2(冷)

松前 桜鱒 渦巻大根 うすい豆 蕨 独活生姜千六本

桜鱒 渦巻大根

この一皿は、日本の煮物文化の結晶だ。桜鱒を渦巻き状に整えた大根で包み、蕨・うすい豆・独活生姜千六本が春の滋味を添える。松前——北の海の記憶を纏った素材が、出汁の旨みの中に静かに佇む。

「しっかり熟成・重厚感 × 出汁の旨味・鱒の脂」というペアリング指示に従い、Assemblage 2を冷で合わせる。熟成感のある複雑なIWAが、鱒の脂を受け止め、出汁の旨みと絡み合う。脂と旨みの共鳴が長い余韻を生んだ。


≪名物≫ Assemblage 2(30〜35℃)

谷口ファーム ふらの和牛 葉牛蒡

ふらの和牛 葉牛蒡

この夜の名物として特記されたひと皿。富良野・谷口ファームのふらの和牛を日向燗温度(30〜35℃)のIWA Assemblage 2に合わせる。肉は鮮やかなピンク色に均一に火が入り、葉牛蒡が苦みのアクセントを加える。

同じAssemblage 2でも、温度を上げることでアロマが開き、酒の旨みが増幅する。ふらの和牛の「繊細な脂の旨味」とAssemblage 2の厚みが重なったとき、IWAがなぜアッサンブラージュという手法を選んだかを体感として理解した。複数の原酒が重なり合う複雑さが、和牛の多層的な旨みと正確に対応していた。


≪油物≫ Assemblage Reserves(冷)

唐津 彼岸河豚 山椒揚げ 天然蕗の薹

彼岸河豚山椒揚げ 天然蕗の薹

唐津産の彼岸河豚(ひがんふぐ)を山椒で揚げた一品と、天然の蕗の薹。揚げ物と早春の苦みという組み合わせに、Assemblage Reserves(冷)を合わせる。

Assemblage Reservesは市販されていない非売品だ。複数年のヴィンテージを重ねた原酒のみで構成された、言わばIWAのアーカイブであり、この夜のためだけに持参されたものだという。「古酒の複雑味・シルキーな舌触り × 衣のスパイス・河豚の旨味」という設計どおり、Reservesの熟成した深みが河豚の繊細な旨みを包み込む。

山椒の刺激と蕗の薹の苦みという、ともすれば酒の邪魔をしかねない強い個性を、IWAの複雑味が受け止めて一体化させる。この一杯が飲めること自体が、この夜だけの特権だった。


≪食事≫ Assemblage 3(冷)

小曽原 有機無農薬越光 合馬筍 酒粕土鍋ご飯 御香香 御御御付

合馬筍の酒粕土鍋

合馬筍ご飯 御香香 御御御付

食事(〆のご飯)として供されたのは、小曽原の有機無農薬越光に合馬(おうま)産の筍を白岩酒造の酒粕で炊いた土鍋ご飯。土鍋で炊き上げた筍ご飯は、酒粕の発酵旨みが米に染み込んでいる。御香香(おこうこ)と御御御付(みそしる)が脇を固める。

「旨味の3を冷でキリッと × 酒粕と米の旨味・筍の風味」——Assemblage 3は冷でキリッとした印象の酒だ。筍と酒粕と米の旨みが三位一体になった料理を、IWAの清澄な酸がシャープに整える。この組み合わせで初めて「食中酒としてのIWA」という別の顔が見えた。


≪菓子≫ 抹茶甘酒(温)

桜道明寺 うすい豆餡 桜花塩漬け

桜道明寺 うすい豆餡

最後は、温かい抹茶甘酒とともに。ワイン酵母酒粕を使った抹茶甘酒は、酒粕の旨みと抹茶の苦みが穏やかに溶け合う。桜道明寺にうすい豆餡と桜花の塩漬けを合わせた和菓子は、春の訪れそのものだ。

食後のデザートとして供された甘酒との対話は、IWAのアッサンブラージュが「食の始まりから終わりまで」を設計できることを示していた。


この夜から持ち帰るもの

IWAの哲学は「アッサンブラージュ」——複数の原酒を精緻に重ねることで、単一の酒では到達できない複雑さと調和を生み出すことだ。ワインの世界ではシャンパーニュが採用するこの手法を、リシャール・ジョフロワ氏は日本酒に持ち込んだ。

盈月の料理もまた、ひとつの素材を丁寧に扱いながら、複数の要素を重ねて奥行きを作る。蟹と太白ごま油、桜鱒と松前の出汁、ふらの和牛と葉牛蒡——それぞれが主役と脇役を入れ替えながら、皿の上でアッサンブラージュしている。

「単なる日本酒ではなく、時間・空間・料理と共鳴するための作品」とフライヤーに書かれていた言葉は、この夜の体験を正確に言い表していた。IWAは飲む前に、料理と空間と時間をも設計している。そのことを実感した3時間だった。


第2回 Maker’s Dinner「IWA × 盈月」は2026年3月12日、御料理 盈月にて開催。35,000円(税込)、予約制。

白岩酒造 IWA5 : https://iwa-sake.jp/ja/

御料理 盈月 : https://www.oryouri-eigetsu.com/

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